著作権法の一部を改正する法律
趣旨
授業目的公衆送信補償金制度を廃止し、補償金を払うことなく授業目的公衆送信を可能にすることを目的とする。
2018年の著作権法改正により、授業目的公衆送信補償金制度が導入され、授業を目的とした公衆送信が遠隔合同授業以外についても広く認められた一方で、各学校においてどの著作物をどのように使用したのかを一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)に申請し、補償金を払わなければならなくなった。
本改正案は、このコロナ禍において急速に進展した学校教育におけるICTの活用をより推し進めるにあたり、授業目的公衆送信補償金制度が、教員の事務手続きの煩雑化をもたらし、また補償金がさらなるICTの活用と新たな授業実践の開発の妨げとなっているとして、これを廃止し、無償・無許諾での授業を目的とした公衆送信を可能とする。
これにより、完全オンライン授業や、授業の予習教材の事前送信(反転授業)なども手続きや申請無しでおこなうことができるようになり、ICTを活用しての、より高度で学習効果の高い実践が可能となり、公共の利益に繋がるだろう。
著作権法の一部を改正する法律#
著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)の一部を次のように改正する。
【現行】
目次
第一章~第四章(略)
第五章著作権等の制限による利用に係る補償金
第一節私的録音録画補償金(第百四条の二―第百四条の十)
第二節授業目的公衆送信補償金(第百四条の十一―第百四条の十七)
第六章~第八章(略)
附則
【改正案】
目次
第一章~第四章(略)
第五章著作権等の制限による利用に係る補償金
第一節私的録音録画補償金(第百四条の二―第百四条の十)
(削除)
第六章~第八章(略)
附則
【現行】
(学校その他の教育機関における複製等)
第三十五条 学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における利用に供することを目的とする場合には、その必要と認められる限度において、公表された著作物を複製し、若しくは公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。以下この条において同じ。)を行い、又は公表された著作物であつて公衆送信されるものを受信装置を用いて公に伝達することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該複製の部数及び当該複製、公衆送信又は伝達の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
2 前項の規定により公衆送信を行う場合には、同項の教育機関を設置する者は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。
3 前項の規定は、公表された著作物について、第一項の教育機関における授業の過程において、当該授業を直接受ける者に対して当該著作物をその原作品若しくは複製物を提供し、若しくは提示して利用する場合又は当該著作物を第三十八条第一項の規定により上演し、演奏し、上映し、若しくは口述して利用する場合において、当該授業が行われる場所以外の場所において当該授業を同時に受ける者に対して公衆送信を行うときには、適用しない。
【改正案】
(学校その他の教育機関における複製等)
第三十五条 学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における利用に供することを目的とする場合には、その必要と認められる限度において、公表された著作物を複製し、若しくは公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行い、又は公表された著作物であつて公衆送信されるものを受信装置を用いて公に伝達することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該複製の部数及び当該複製、公衆送信又は伝達の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
(削除)
(削除)
【現行】
第二節 授業目的公衆送信補償金
(授業目的公衆送信補償金を受ける権利の行使)
第百四条の十一 第三十五条第二項(第百二条第一項において準用する場合を含む。第百四条の十三第二項及び第百四条の十四第二項において同じ。)の補償金(以下この節において「授業目的公衆送信補償金」という。)を受ける権利は、授業目的公衆送信補償金を受ける権利を有する者(次項及び次条第四号において「権利者」という。)のためにその権利を行使することを目的とする団体であつて、全国を通じて一個に限りその同意を得て文化庁長官が指定するもの(以下この節において「指定管理団体」という。)があるときは、当該指定管理団体によつてのみ行使することができる。
2 前項の規定による指定がされた場合には、指定管理団体は、権利者のために自己の名をもつて授業目的公衆送信補償金を受ける権利に関する裁判上又は裁判外の行為を行う権限を有する。
(指定の基準)
第百四条の十二 文化庁長官は、次に掲げる要件を備える団体でなければ前条第一項の規定による指定をしてはならない。
一 一般社団法人であること。
二 次に掲げる団体を構成員とすること。
イ 第三十五条第一項(第百二条第一項において準用する場合を含む。次条第四項において同じ。)の公衆送信(第三十五条第三項の公衆送信に該当するものを除く。以下この節において「授業目的公衆送信」という。)に係る著作物に関し第二十三条第一項に規定する権利を有する者を構成員とする団体(その連合体を含む。)であつて、国内において授業目的公衆送信に係る著作物に関し同項に規定する権利を有する者の利益を代表すると認められるもの
ロ 授業目的公衆送信に係る実演に関し第九十二条第一項及び第九十二条の二第一項に規定する権利を有する者を構成員とする団体(その連合体を含む。)であつて、国内において授業目的公衆送信に係る実演に関しこれらの規定に規定する権利を有する者の利益を代表すると認められるもの
ハ 授業目的公衆送信に係るレコードに関し第九十六条の二に規定する権利を有する者を構成員とする団体(その連合体を含む。)であつて、国内において授業目的公衆送信に係るレコードに関し同条に規定する権利を有する者の利益を代表すると認められるもの
ニ 授業目的公衆送信に係る放送に関し第九十九条第一項及び第九十九条の二第一項に規定する権利を有する者を構成員とする団体(その連合体を含む。)であつて、国内において授業目的公衆送信に係る放送に関しこれらの規定に規定する権利を有する者の利益を代表すると認められるもの
ホ 授業目的公衆送信に係る有線放送に関し第百条の三及び第百条の四に規定する権利を有する者を構成員とする団体(その連合体を含む。)であつて、国内において授業目的公衆送信に係る有線放送に関しこれらの規定に規定する権利を有する者の利益を代表すると認められるもの
三 前号イからホまでに掲げる団体がそれぞれ次に掲げる要件を備えるものであること。
イ 営利を目的としないこと。
ロ その構成員が任意に加入し、又は脱退することができること。
ハ その構成員の議決権及び選挙権が平等であること。
四 権利者のために授業目的公衆送信補償金を受ける権利を行使する業務(第百四条の十五第一項の事業に係る業務を含む。以下この節において「補償金関係業務」という。)を的確に遂行するに足りる能力を有すること。
(授業目的公衆送信補償金の額)
第百四条の十三 第百四条の十一第一項の規定により指定管理団体が授業目的公衆送信補償金を受ける権利を行使する場合には、指定管理団体は、授業目的公衆送信補償金の額を定め、文化庁長官の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 前項の認可があつたときは、授業目的公衆送信補償金の額は、第三十五条第二項の規定にかかわらず、その認可を受けた額とする。
3 指定管理団体は、第一項の認可の申請に際し、あらかじめ、授業目的公衆送信が行われる第三十五条第一項の教育機関を設置する者の団体で同項の教育機関を設置する者の意見を代表すると認められるものの意見を聴かなければならない。
4 文化庁長官は、第一項の認可の申請に係る授業目的公衆送信補償金の額が、第三十五条第一項の規定の趣旨、公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)に係る通常の使用料の額その他の事情を考慮した適正な額であると認めるときでなければ、その認可をしてはならない。
5 文化庁長官は、第一項の認可をしようとするときは、文化審議会に諮問しなければならない。
(補償金関係業務の執行に関する規程)
第百四条の十四 指定管理団体は、補償金関係業務を開始しようとするときは、補償金関係業務の執行に関する規程を定め、文化庁長官に届け出なければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 前項の規程には、授業目的公衆送信補償金の分配に関する事項を含むものとし、指定管理団体は、第三十五条第二項の規定の趣旨を考慮して当該分配に関する事項を定めなければならない。
(著作権等の保護に関する事業等のための支出)
第百四条の十五 指定管理団体は、授業目的公衆送信補償金の総額のうち、授業目的公衆送信による著作物等の利用状況、授業目的公衆送信補償金の分配に係る事務に要する費用その他の事情を勘案して政令で定めるところにより算出した額に相当する額を、著作権及び著作隣接権の保護に関する事業並びに著作物の創作の振興及び普及に資する事業のために支出しなければならない。
2 文化庁長官は、前項の政令の制定又は改正の立案をしようとするときは、文化審議会に諮問しなければならない。
3 文化庁長官は、第一項の事業に係る業務の適正な運営を確保するため必要があると認めるときは、指定管理団体に対し、当該業務に関し監督上必要な命令をすることができる。
(報告の徴収等)
第百四条の十六 文化庁長官は、指定管理団体の補償金関係業務の適正な運営を確保するため必要があると認めるときは、指定管理団体に対し、補償金関係業務に関して報告をさせ、若しくは帳簿、書類その他の資料の提出を求め、又は補償金関係業務の執行方法の改善のため必要な勧告をすることができる。
(政令への委任)
第百四条の十七 この節に規定するもののほか、指定管理団体及び補償金関係業務に関し必要な事項は、政令で定める。
【改正案】
(削除)
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